~二十四節気と“旬”の食べもの~いのちを育む食の基本
「日本には美しい季節の移ろい「四季」があり、季節ごとに
花が咲いて木々が色づき、雪が舞い、そして食材は旬を迎えます。
この自然の移り変わりを、日本人は二十四の季節に分けて見つめてきました。今回は、「二十四節気」という季節の考え方と、季節の食べものを食すことの意味について考えていきたいと思います。
二十四節気
季節を知るよりどころ【二十四節気】
「二十四節気」は、太陰暦(1年354日)を用いていた時代に、1年365日の太陽暦に基づいた季節を表すための工夫として考え出されたもの。1年が24に等分され、それぞれに天候や生き物の様子を表す名前が付けられています。もともとは古代中国で考案されたものですが、季節を知るよりどころとして日本人にも古くから親しまれてきました。節気の間隔が一定で半月ごとの季節変化に対応でき、また毎年同じ時期に同じ節気が巡ってくるため、天候に影響される農業にとって大変便利な目安だったそう。実は今でも、時候の挨拶や年中行事など、さまざまなシーンで使われています。
これから迎える7月・8月は、二十四節気のうち「小暑」「大暑」「立秋」「処暑」にあたる季節。梅雨明けも間近となり湿っぽさの中に夏の熱気を感じ始める「小暑」から、夏の暑さが本格化し農家にとっては暑い中での大変な農作業が続く「大暑」、そして、少しずつ涼しくなり秋の気配が近づく「立秋」を迎え、日中の暑さは残るものの朝晩の涼しさに初秋の息遣いを感じる「処暑」へと移ろいでいきます。
季節ごとにある「旬」の食べもの
季節の移り変わりは、旬の食べものの移り変わりでもあります。これからの時季(夏)に旬を迎える食材としては、例えば「きゅうり」「トマト」「なす」「ピーマン」などがありますね。果物では「桃」「プラム」「スイカ」などが、魚介では「ウナギ」「アユ」「スズキ」などが旬を迎えます。最近は季節に関わらずどんな食材でもスーパーなどで手軽に手に入るようになったため、あまり旬を意識したことがないという方も多いでしょう。しかし、昔はこうした旬を迎える食材をその季節に食すことが当たり前でした。それこそが食の基本であり、日本ならではの季節を受け入れ生きていくことの基本でもあったのです。
なぜ旬のものを食べるのがよい?
「今は好きなものを好きな時季に食べられるし、旬なんて気にしなくていいでしょ?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、旬のものを食べるということには、とても大きな利点があります。まず挙げられるのは「美味しさ」と「栄養価の高さ」。その食材にとって最も生育条件の揃った環境で育ち 最も成熟する時期を迎えた旬の食材は、味わい・栄養価においても最もピークな状態なのです。例えば旬の野菜は、季節はずれの野菜に比べて栄養価が倍以上とも言われます。これは、食べなくてはもったいないですね。また、旬の食材は市場に多く出回るため価格もお手頃に。美味しくて栄養価が高く、値段もお手頃―旬の食材にはこんなにも多くのメリットがあるのです。
身体が欲するものを補ってくれる…?
「DHA・EPA」は、魚の中でもとくに「青魚」に多く含まれます。青魚というのはイワシやサバ、サンマ、マグロなど皮が青い魚(マグロは赤身よりもトロに多く含まれる)。お魚屋さんやスーパーなどでもよく見かける定番の魚たちです。「DHA・EPA」を摂るなら、これら青魚を積極的に食べるのがおすすめです。
また、食べ方にも少し注意が必要。「DHA・EPA」は主に魚の脂に含まれる成分なので、脂を避けてしまっては効率的に摂取できません。たとえば煮魚にした場合は、ぜひ煮汁に浮いた脂も捨てずに頂きましょう。それから、魚焼きグリルなどで焼いた場合はほとんどの脂が下に落ちてしまうので、もったいないかもしれません。最も効率よく摂れるのは、生のまま頂くお刺身やカルパッチョなど。熱による酸化も防ぐことができます。〝DHA・EPAは脂の中に含まれている〟という事を知っておけば食べ方の参考になると思うので覚えておいてくださいね。ちなみに、青魚に比べると量は少ないですが、白身魚にもDHA・EPAは含まれます。ですので、お魚自体の食べる回数を増やすことを心掛けるとよいでしょう。
また、〝魚の摂り方〟つながりで1つ知っておきたいことがあります。それは、丸ごと食べられる魚は体に良い、ということです。たとえばジャコやししゃも、シラス干し、ワカサギなどですね。これらの小魚は、切り身やお刺身では除かれてしまう骨や内臓まで全部頂けるので、女性に不足しがちな鉄やカルシウムといったミネラルも摂れる利点があります。貧血がちだったり、背骨が曲がったりしていてはちょっと残念ですよね。ぜひ、食生活に取り入れてみてください。
今こそ〝旬の食べもの〟を見直そう
現在の日本の食生活においては〝旬のものを食べる〟という考えが失われつつあり、お金さえだせば季節に関わらずほぼ1年中好きなものが食べられます。しかし、そんな時代だからこそ、旬の食材を食べる習慣を始めてみませんか?ここまでご紹介してきたように、旬の食材は、美味しいだけでなく理に適った力を秘めています。
また、旬のものが食卓に並ぶ食生活では、きっと季節の移り変わりもより身近に感じられることでしょう。
暑さや寒さだけでなく毎日の食事からも季節を感じられる生活は、とても自然で日本らしく、素敵なもの。ぜひ旬の食材を取り入れた食生活で、日本の美しい季節の移ろいを楽しみましょう。
「身土不二」でより健康に、生き生きと。
身土不二という言葉をご存知でしょうか?これは、「身と土 二つにあらず」つまり人間の身体と人間が生きる土地は一体であり、切っても切れない密接な関係にある、という意味の言葉です。言葉の起源は遥か昔の仏典に遡りますが、近年は、「その土地で採れるものを食べるのが良い」といった意味で、食の思想としてよく謳われます。その土地で採れた旬なものを主に食べて生活していれば、その土地の風土や気候に適応し季節の変化にもついていける、つまり健康に生きていける、といった考えですね。
例えば、暑い国では水分補給に良い南国特有の野菜や果物がよく育ちます。そこで暮らす人々には暑さをしのぎ体調を整えるために欠かせない食材ですが、寒い土地で同じ食生活をしては身体が冷えてしまうでしょう。また同様に、暑い夏には身体を冷やす性質の野菜が、冬には身体を温める性質の野菜が主に採れます。自然はうまくできていると思わざるを得ません。
日本であれば、“国産の旬な食材”を食べるのが良いということになります。国産が難しい場合は緯度の近い国で採れる食材でもよいでしょう。ぜひ普段の食生活にこの「身土不二」の考えを取り入れてみてください。より健康で、生き生きとした生活を育んでくれるはずです。
アレアde食育 column
呼吸を整えてカラダを整える。
いよいよ春ですね。心躍る芽吹きの季節です。
皆さんは、自分の呼吸を意識したことがありますか?
正しく自然な呼吸は、身体や脳、心など毎日の健康な生活に大きな影響を与えます。生きるキホンである呼吸の大切さについて、改めて考えてみましょう。
普段、自分の呼吸を意識することはあるでしょうか?
「はい」と答える方は少ないかもしれませんね。
普段生活をしている中であまり意識することの少ない呼吸ですが、呼吸を正しく自然に行なえているかどうかで、身体の調子や頭の働き具合、気持ちにも違いが出ることがあります。呼吸が浅かったり、リズムが乱れていたり、無意識のうちに止めてしまっていたり…不自然な呼吸は、さまざまな不調のもとになります。
毎日の生活をイキイキと健康的に送るために、まずは生きるキホンである「呼吸」をしっかりと意識してみましょう。何も難しいことはありません。ふとした時に、自分が今どのような呼吸をしているか、少し意識を傾けてみるだけでいいのです。例えば人と会話をしている時、食事をしている時、何か体を動かしている時。その動作に呼吸がきちんと調和していますか?変な力が入っていませんか?異常に早くなっていたり、力んで止めてしまったりしていませんか…?
自分の呼吸に意識を向ける習慣を身に付けると、そのうちに自分の呼吸のクセやリズムが分かってくるでしょう。そしたら次は、あえていつもと少し違った呼吸をしてみてください。リズムを変えたり、深さを変えたり、ちょっと止めてみたり。そうすることで、呼吸の違いによる自身の変化も見えてくるはずです。呼吸が変わることで、身体の調子がどう違うか?頭の働きや気持ちに変化はあるか…?
このように、自分の呼吸と向き合いコントロールすることは、自分の身体をコントロールすることにつながります。そして、このちょっとした習慣が、毎日をイキイキと変化させてくれるかもしれません。
これから日に日に暑さが増してきます。瑞々しく健康な毎日を送るためにも、ぜひ呼吸と向き合う時間をつくることから、自分の体をコントロールしてみましょう。
協力 ● 花の集い・健康コンシェルジュの会
花の集い・健康コンシェルジュの会は、医学博士、保健学博士、薬剤師、医師、看護師、健康運動指導士、管理栄養士、フードコーディネーター、教育者など、人々の健康を指導してきたプロフェッショナルなプロジェクトです。未来の子供たちのためにも女性たちが健 康を考え、促進することが大切ということで発足されたチーム。ボランティア姿勢での企業とのコラボレーションなどで社会に健康と食育の大切さをアピールするコンセプトで、様々な企画を発信しています。セミナーやワークショップなどの会費や講師料は、現在復興協力として福島に桜の木を植樹し花を咲かす基金として活用しています。
保健学博士 山本 初子
日本女子大学大学院家政学研究科食物・栄養専攻修士課程修了。2000年博士・保健学取得。学習院女子短期大学をはじめとして多くの大学・短期大学・専門学校の非常勤講師を経て実践女子短期大学、桐生大学教授を歴任。管理栄養士。花の集い・健康コンシェルジュの会会員、IFF公認プラクテイショナー。
健康運動指導士 湊 真里
1957年 静岡県生まれ、1979年 東京女子体育大学卒業、1988年 健康運動指導士資格修得、2000年 フェルデンクライスメソッド国際ライセンス取得
大学卒業後より有酸素運動時の質の良い動きについて研究。身体調整体操として集大成させ、本体操を創始。現在、指導者の養成に力を入れている。また、保健センターなどで健康教育の講師多数。